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大阪高等裁判所 昭和57年(ラ)65号 決定 1982年5月10日

抗告人 丹信霊

右代理人弁護士 芦田禮一

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一、抗告人の抗告の趣旨及び抗告の理由は別紙記載のとおりである。

二、当裁判所の判断

(一)記録によると、抗告人が昭和五六年八月三一日京都地方裁判所に対し原決定添付別紙物件目録記載の不動産(以下本件不動産という)に対する不動産強制競売の申立をなし、同年九月三日同裁判所は強制競売開始決定をなしたこと、同裁判所は昭和五七年一月二六日本件不動産の最低売却価額金二億〇、四四三万四、〇〇〇円で手続費用及び差押債権者たる抗告人の債権に優先する債権金二億一、八二〇万円(見込額)を弁済して剰余を生ずる見込みがない旨の民事執行法六三条一項による通知をなし、右通知書は同年一月二八日に抗告人に到達したこと、同裁判所は昭和五七年二月九日抗告人が右の通知を受けた日から一週間以内に民事執行法六三条二項各号に定める申出及び保証の提供をせず、かつ剰余を生ずる見込みがあることを証明しないとして本件不動産に対する強制競売の手続を取り消す旨の決定をなしたこと、がそれぞれ認められる。

(二)ところで抗告人は、原裁判所が抗告人の差押債権に優先する債権としたもののうち、小林鈴江、橋詰泰寅、有限会社怡和通商の有する債権は登記簿上抵当権設定の「仮登記」をもって表示された債権であってその合計額は金六、〇〇〇万円であり、かかる抵当権設定仮登記は順位保全の効力を有するにとどまるから、かかる債権をもって抗告人の差押債権に優先する債権に加えるべきではなく、これらの債権を優先債権にあたるものとしないときは最低売却価額を弁済して剰余を生ずる見込みがあるから、原決定は民事執行法六三条の解釈を誤った違法があるとして本件抗告に及んだものである。

しかし仮登記を有するにすぎない抵当権者も後日本登記をすればその仮登記の順位において優先弁済権を主張できるという物権的地位を得ているものであり、さればこそ民事執行法九一条一項五号が配当等を受けるべき債権者の債権に係る抵当権が仮登記されたものであるときは、裁判所書記官はその配当等の額に相当する金銭を供託しなければならないものとして仮登記のある抵当権者にも優先配当の留保をなすべきものとしているのであって、抵当権設定の仮登記のある債権も民事執行法六三条一項にいう差押債権者の債権に優先する債権と解すべきである。抗告人引用の東京高等裁判所の昭和四九年八月二二日付決定は昭和五四年法第四号による改正前の民事訴訟法六五六条一項についてのものであって、民事執行法六三条一項の解釈についての適切な先例となしえないものというべく、仮登記に止る小林鈴江外二名の有する債権を優先債権に加えるべきでない旨の抗告理由は採用し難い。

よって本件抗告は理由がないからこれを棄却すべく、抗告費用は抗告人の負担としたうえ主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 今富滋 裁判官 藤野岩雄 亀岡幹雄)

<以下省略>

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